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トウキョウソナタ

現実に押しつぶされ、非現実に打ちのめされ、そしてまた現実をやり直す。そんな家族の物語。

2008年 監督:黒沢清 主演:香川照之/小泉今日子


少し前に読んだ本、「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代の冒頭に、この映画の概要が出てきた。
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リストラされた事を隠し、威厳を保とうと必死な父親。そんな父を表面上は敬いつつ、蔑む家族。息子の一人は給食費を使い込みピアノを習い、もう一人は大学をさぼってティッシュ配り。母は再び家族をつなげようとするもうまくいかず、心がはなればなれに成る家族。その家族が・・・。
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というような感じ。ちなみに、この本自体は、『今の日本は絶対的な評価基準(たとえば宗教とか)が無いから、コミニュケーションばかりが人としての評価基準となっている → 身近な輪の中での承認を重視してしまう(承認不安) → 周囲に迎合してしまい、世界が狭まっている → もっと自然の価値観(善・徳)をベースに自立したら楽に生きれるよ?』的な内容(だったような気がする)。賛同はできるけど、「著名な哲学者の理論もアイヒマン実験も、全て私の提唱する承認欲求が根本にある」 という強引な流れが好きになれなかった。自分には難しかっただけかも。。

でも、この映画に出会えたのは、とても良かった。




ありふれた風景からはじまり、いきなり現代の闇を描くドキュメンタリーのような重苦しい感じへ。
そして、役所広司が出てくる辺りから一転。現実的な話から、何やら演劇、というか喜劇を見ているかのような感じになり物語が一気に展開。「4年後・・・」で始まる最後のシーンは涙が溢れそうに成る。
エンドロールには音楽が無い。それが、よりこの映画の雰囲気を印象づける。

この映画は、配役がとてもいいと思う。中でも小泉今日子の母親役がいい。「動」の香川照之と「静」の小泉今日子。一歩引いた母親を演じる小泉今日子がほんとに良い。何かに「夫婦が最高のハマリ役」と書いてあったが、まさにという感じ。そして日常のありふれた風景が、何気なくおしゃれに表現されているのもいい。

最初から最後まで、”地味”なのにどんどん惹きつけられる。シリアスなのにコミカル。

そんな、不思議でいい映画でした。



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